Statement



My artwork is made of ashes. Things that were once “something” turned into particles we call ash.

The countless cracks on the surface are not controlled intentionally; each of them is shaped by the unseeable laws of nature.
In these works the acts of humans and the laws of nature coexist.

These cracks are the beginning of “annihilation”. The transition from the present form to the next.
At the same time, they are the beginning of “creation”. This artwork experiments with the boundary between the two.



「地表の土砂のひとつひとつの粒子が、かつては、輝く陽の君の頬、金星の美女の額であった。
袖にかかる砂塵をやさしく払うがよい、それもまた、はかない女の頬であった。」
ー「ルーバイヤート」 第5章 土から土へ 58 著 オマル・ハイヤーム 編訳 岡田恵美子ー

これは十一・十二世紀ペルシアに生きた科学者であり詩人のオマル・ハイヤームの詩の一節である。
ハイヤームは詩の中で自然や人間の変転を物質の変化としてとらえている。
身体を構成する物質の 粒子は死後土に変化するという。そして職人の手により捏ね上げられ、焼かれ、美しい壷や盃となる。
今、我々が使っている湯のみや器がかつては戦国武将の鋭い眼球・何千年も前の美女の白い指先で はないとは言い切れない。

私の作品は灰で出来ている。かつて「何か」であったモノが灰という粒子となる。
そこから形態を 変化させ絵画として提示された時、私達の視覚は頼りなくその現在の姿を見ることしか叶わない。
粒子が形態を変化させ辿ってきた道筋作品を通し遡って行くことを可能としたい。

私の制作において、「創造」と「消滅」というキーワードは作品の実践を支えてきた大きなテーマである。
全ての物質がそれぞれに持つ時間の中で繰り返してきた「流転」の中では、美術作品もその 例外とは言えないと考える。

私の作品は粒子の巡って来た一瞬を切り取った現在の姿だ。
表面の無数のクラックは意図した形で はなく、その一つ一つが見えない自然の法則によって形作られている。
そこには人間の作為と自然 の法則が両立している。

このクラックは今の姿から次の姿に移り変わる「消滅」の始まりであり、 同時に「創造」の始まりでもある。
作品はそれらの境界線についての試行である。